CRMの分析方法と活用事例~代表的かつ効果的な3つの分析方法~

CRMとは、「カスタマー・リレーションシップ・マネージメント(Customer Relationship Management)」の略で、日本語では「顧客関係管理」と訳されます。

CRM分析を既存顧客とのリレーション強化に役立て、優良顧客を育成することで、LTV(Life Time Value)を最大化できると言われており、CRM分析はいまや企業がマーケティング戦略を立てていくうえで欠かせないものとなりました。

この記事ではCRMの分析方法のなかでも代表的かつ効果的な3つの方法と、分析結果に基づいた具体的な改善策までご紹介します。

 

1.いまCRM分析が重要な理由

CRMは既存顧客からの売上で最も基本的なマーケティング手法として昔から定着していますが、近年、その手法が改めて見直されています。まずは、最近CRMが注目されるようになった背景と、CRMが企業の経営改善に効果的とされる理由を解説します。

CRMが注目される背景

CRMが注目されるようになってきたのは、広告などのプロモーション手法の多様化に加え、スマホやSNSの普及によって、顧客が受け身にならず能動的に情報を選ぶようになったことが背景にあります。

ひと昔前は、テレビや雑誌などのマスメディアを使い、不特定多数の人を対象にマーケティングを行うのが主流でした。しかし、消費者自ら情報にアクセスできるようになった今、顧客のニーズはどんどん多様化しており、それぞれの顧客に合わせたアプローチが必要とされています。

そのため、一度つながりを持った顧客を分析し属性に合わせたマーケティングを行い、関係性を築いていくことが重要になってきたのです。

CRMが効果的な理由

CRMは、新規顧客の獲得が目的なのではなく、既存顧客からのリピート購入を目的とします。

すでにコミュニケーション手段を持つ顧客に対するアプローチは、広告やSEOを通した新規顧客獲得よりもコストがかからず、高い収益を期待できます。

とくにこれまで十分にCRM戦略を実施していない場合は、CRM分析をマーケティングに活用すると大きな効果が見込めるでしょう。

 

2.CRMでよく活用される分析方法

リピート率改善や優良顧客の育成を効率的に行うために用いられるCRM分析にはさまざまな方法があり、複数の手法をかけ合わせるとより高い効果を得られます。

ここからはCRMでよく活用される分析方法をご紹介します。

RFM分析

RFM分析とは、直近の購入時期を意味するRecency、購入頻度を表すFrequency、そして購入金額を表すMonetaryの頭文字を取って名づけられた分析方法です。

RFMの3つの指標に基づいて、顧客を「優良顧客」から「離反客」までグループ分けを行い、集団ごとに最適なCRM施策を行うことができます。

F2転換率

F2転換率とは、初回購入を行った新規顧客のうち、2回目の購入を行った顧客の割合を調べて分析する方法です。F2ユーザーを増やすことで全体のリピート数を増やすことが可能です。

購入サイクル

顧客が、次回購入するまでの期間を分析する方法です。割り出した購入サイクルで、情報提供の頻度などの参考にすることができます。

デシル分析

デシル(Decile)はラテン語で「10分の1」を意味し、顧客を購入金額が高い順に10個のグループに分けて、優良顧客を明らかにする分析方法です。ハガキなどのDMは、全ユーザーに送るとコストが膨大になるため、効果的なユーザーのみを選定してDMを送る際などに役立ちます。

セグメンテーション分析

セグメンテーション分析とは、年齢や性別などの顧客属性や趣味嗜好、購買履歴を調べて類似する特徴を持つ顧客ごとにグルーピングして分析する方法で、既存顧客の特性を把握できる手法です。

CPM分析

カスタマー・ポートフォリオ・マネージメント(Customer Portfolio Management)の頭文字から名づけられた分析方法で、顧客をポートフォリオに合わせて10パターンに分類し、それぞれのグループに適した施策を行って中長期的に顧客育成をするときによく用いられます。

行動トレンド分析

属性ごとに顧客を分類し、シーズンごとの購買データを割り出して販促に活用する方法です。時期に合わせた売れ行きが分かるため、顧客へのプロモーションや次の販売戦略立案に使用されます。

CTB分析

CTB分析は、分類を表すカテゴリー(Category)、デザインやサイズを表すテイスト(Taste)、そしてブランド(Brand)の3つの指標に基づいて顧客を分類する方法で、顧客の志向を把握して購買予測を立てるときに利用します。

クラスター分析

クラスター分析は、さまざまな異なる性質を持つものが混ざり合った集団から、似た性質のものだけを集めてクラスター(同じような傾向を持つ集団)を作って分析する手法です。

 

3.効果的な3つのCRM分析方法

CRM分析の手法はご紹介したほかにも数多くありますが、弊社でよく使用する効果的な3つの分析方法を、実際の具体例を用いながらご紹介します。

①.RFM分析の把握

Recency(直近購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つの要素で顧客をランク分けしてグルーピングするRFM分析は、最も基本的かつ有効な手段と言われています。

実際の分析フローを、ネットスーパーを例に見ていきましょう。まずはR・F・Mそれぞれの基準を決めていきます。

〈基準〉
R(直近購入日)・・・1週間以内 / 1カ月以内 / 半年以上前
F(購入頻度)・・・年間1~5回 / 年間6~15回 / 年間16回以上
M(購入金額)・・・1万円未満 / 1万円~5万円 / 5万円以上

基準を決めたら、要素を組み合わせて属性分けを行います。このとき、3つの基準全てを組み合わせても、どれかひとつの基準を使用しても構いません。

〈属性の定義〉
優良顧客・・・R:1週間 × F:年間16回以上 × M:5万円以上
休眠顧客・・・R:半年以上前
ランクアップ顧客・・・R:1カ月以内 × F:年間1~5回

そして、属性ごとに手段を変えながら適切なアプローチを行っていきます。

例えば、優良顧客にはノベルティのプレゼントや配送料無料サービスなどを行い、特別感を与えられる販促を意識します。反対に、休眠顧客にはメルマガでお得なプランやキャンペーンをお知らせする、ランクアップ顧客には休眠顧客にならないようにDMを送るなどが有効的です。

しかし、RFM分析は必要なデータ量も多いため、データが足りず取り組みが難しい方は次に紹介するF2転換率や購入サイクルを活用してみましょう。

②.F2転換率の把握

F2転換率は、新規顧客のうち2回目も利用してくれた顧客の割合のことで、リピート購入に繋がったかどうかを測る指標です。

3回目の購入はF3、4回目の購入はF4と続いていきますが、初回購入から再購入に至る人数が一番多く、F2転換率を上げることで、F3、F4のユーザー数も増えていくため、F2転換率がもっとも重要視されています。

例えば、化粧品の定期通販では、初回購入時に大幅割引をするキャンペーンをよく行うため、次回購入にどう結びつけるかが非常に重要視されます。F2転換率はブランド、商品、販売形態によって大きく差があり、一概に20%以上が良くて、20%未満が割と言い切れるものではありません。F2転換率を定期的に調査してその数値を上げることを考えていきましょう。

年間売上が億単位になると、F2転換率を5%アップすることで、千万円単位で売上アップを実現できることもあります。

F2転換率が低い時は、お客様の声や商品の便利な使い方などユーザーに有益な情報をステップメールで送ったり、初回購入時の包装の中に他の商品のチラシを入れたりするなど、様々な対策がありますが、次回購入を意識した情報提供が効果的です。

③.購入サイクルの把握

購入サイクルの分析方法は、ウォーターサーバーを例に見ていきましょう。

ウォーターサーバーを契約すると、一般的に水を届ける周期を決められる定期配送というサービスがあります。この定期配送の周期を決めるときに、顧客の購入サイクルが役立ちます。

ウォーターサーバーでは、最初に水を頼んでから次に水を注文する期間が購入サイクルとなりますが、定期配送の最短周期を1週間と設定しているのに、顧客の購入サイクルが5日だった場合、ニーズとずれるため顧客が離反する、販売機会を逃すといった可能性があります。

定期通販商材を扱っている場合は、購入サイクルを必ず調査するようにしましょう。

 

4.ECマーケティングのCRM分析事例

それでは最後に、ECマーケティングが実際に行ったCRM分析の事例をご紹介します。

3つの方法で分析を行う

まず、RFM分析を実施したのですが、ここでは、RFのみの分布を把握しました。その際、下記のカテゴライズで分類しました。

  • 優良顧客
  • リピーター
  • 新規購入顧客
  • 優良顧客からの離反顧客
  • 離反顧客

それぞれのユーザー数と比率を出して、自社の顧客分類を把握します。

ここで、優良顧客が2%程度と極端に少なく、離反ユーザーが60%超存在することが分かりました。

【RFM分析で見つけた課題】
リピーターからの優良顧客化策の必要性
離反ユーザーに対する対応策の必要性

次に、F2転換率を出すと18%程度となり、同業界の平均と比較するとまだまだ伸びしろがあることが分かりました。

【F2転換率から見つけた課題】
F2転換率をどう上げていくか

最後に、購入サイクルの把握です。ここでは、商品を2回以上購入したユーザーに対しての購入サイクルを割り出し、30~40日程度で次回購入することが把握できました。つまり、次回購入意欲が高まるのは購入から30~40日後となります。

実施した施策

CRM分析の結果から、行った施策は以下の3つです。

初回購入ユーザーに対してのステップメール

初回購入ユーザーに、初回購入日から5日おきにステップメールを設定して配信、購買意欲が高まる前の25日目からは、2回目購入ユーザー限定のオファー(プレゼント、クーポン倍増など)を設計して、F2転換率のアップを図りました。

離反顧客へのメール(休眠掘り起こしメール)

180日以上購入していないユーザーを休眠顧客と定義して、180日を超えたところで、休眠顧客に限定したオファー(今すぐ使えるクーポンなど)をメールとアプリのプッシュ通知で配信しました。

2回目購入ユーザーへのメール

リピーターから優良顧客にするために、2回目購入ユーザーに対して、お得な購入方法や他商品へのクロスセルなどを積極的に配信して、優良顧客への転換を図りました。

結果的に、3ヶ月後には、F2転換率は4%ほどアップ、毎回、わずかながら離反ユーザーからの購入もあり、優良顧客も3%超という結果となりました。

 

CRM分析にも有用なCRMシステムに関しては「CRMシステムのメリット・デメリットと導入前の確認ポイント」をご覧ください。

CRMシステムのメリット・デメリットと導入前の確認ポイント

 

5.まとめ

顧客へのプロモーション方法が多様化する中、新規顧客獲得よりも既存顧客との関係性強化を目指したCRMが見直されています。

より効果的な販促を行うために用いられるCRM分析にはさまざまな手法がありますが、なかでもF2転換率、FRM分析、購入サイクルの3つがより効果的です。

しかし、CRM分析は複数の手法を取り入れ、多角的に顧客分析を行うことがおすすめです。分析を行ったら、結果に基づいて仮説を立て、課題に合わせた施策を行いましょう。

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Webコンサルタント 広告代理店にてメディア運営・SEOディレクション・Web広告運用を経験。 現在はコンテンツSEOとWeb担当者向けメディア『Webly』の編集を担当。

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